大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和53年(オ)1101号 判決

上告人 富田茂男

被上告人 平岡智恵子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中野峯夫、同内田達夫の上告理由前文一及び第一点について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、前提を欠く。論旨は、原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。

同前文三、第四点及び跋文二について

民法七八一条一項所定の認知の届出にあたり、認知者が他人に認知届書の作成及び提出を委託した場合であつても、そのことの故に認知の有効な成立が妨げられるものではなく、また、血縁上の親子関係にある父が、子を認知する意思を有し、かつ、他人に対し認知の届出の委託をしていたときは、届出が受理された当時父が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届出の受理により認知は有効に成立するものと解するのが相当である(最高裁昭和四五年(オ)第二六六号同年一一月二四日第三小法廷判決・民集二四巻一二号一九三一頁参照)。これと同旨に出た原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解又は原審の認定に沿わない事実に基づき原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

右上告代理人らのその余の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗本一夫 裁判官 大塚喜一郎 本林讓)

上告理由書〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例